[著者情報]
✍️ 執筆:今井 健治(儀礼マナーアドバイザー / 1級葬祭ディレクター)
葬儀現場に20年以上立ち会い、年間300件以上の儀礼をサポート。IT企業を含む若手ビジネスパーソン向けに「意味から理解する最短マナー」を提唱。難しい用語を排し、即実行可能な解決策を提示することを信条とする。
「明日、先輩のお父様の通夜なのに、香典の準備が全くできていない……」
「コンビニに香典袋は売っているけれど、どれを選んで、何で書けばいいんだ?」
今、この瞬間に焦っている田中翔太さんのような28歳のビジネスパーソンにとって、香典準備は「マナーの仕様書」がない未経験のタスクかもしれません。しかし、安心してください。
結論から申し上げましょう。宗教が不明な場合でも、コンビニで「御霊前」と書かれた絵のない袋と「薄墨筆ペン」をセットで選べば、9割のケースで失礼のない完璧な対応が可能です。
この記事では、スマホ画面を横に置いてそのまま写すだけで完成する「最短ルート」を解説します。今夜20分で準備を終わらせ、明日は自信を持って先輩を支えてあげてください。
失敗できない今夜。まずコンビニで買うべき「1枚」と「1本」の特定
コンビニの文具コーナーには複数の香典袋が並んでいますが、適当に手に取ってはいけません。IT営業の翔太さんなら、まずは「仕様(条件)」を確認しましょう。
【買うべき袋の仕様】
- 表書き: 「御霊前(ごれいぜん)」と印刷されているもの。
- デザイン: 「蓮の絵」がない無地のもの。
- 水引(ひも): 「黒白」または「双銀(銀一色)」の結び切り。
「宗教が不明な場合、『御霊前』は仏式、神式、キリスト教(カトリック)の葬儀において、共通して使用できる最も汎用性の高い表書きです。ただし、蓮の模様がある袋は仏教専用となるため、宗教が特定できない場合は模様のない袋を選ぶのが最も安全な選択肢となります。」
出典: 葬儀・お通夜の香典マナー – 三越伊勢丹, 2024年12月参照
【買うべきペンの仕様】
- 商品名: 「筆ペン(薄墨・うすずみ)」
ここで重要なのが、普通の黒い筆ペンではなく「薄墨(うすずみ)」を選ぶことです。お通夜や告別式では、薄い墨を使うのが必須の作法です。これには、「突然の悲しみで涙が墨に落ちて薄まった」「急いで駆けつけたため、墨を十分に磨る時間がなかった」という、相手への深い弔意(悲しみの心)を示す意味があるからです。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: コンビニで「薄墨筆ペン」が見当たらない場合でも、通常のサインペンやボールペンで表書きを書くのは絶対に避けてください。
なぜなら、香典の表書きは「筆(または筆ペン)」で書くのが最低限のドレスコードだからです。コンビニを1軒変えてでも、薄墨筆ペンを手に入れてください。その一本のこだわりが、取引先や上司からの「田中君はマナーがしっかりしている」という信頼に直結します。
スマホを横に置いて写すだけ!表書き・中袋の「失敗しないレイアウト図」
道具が揃ったら、次は執筆です。以下のガイドラインに従って、一文字ずつ丁寧に書き進めてください。

執筆時のポイント
- 氏名: 水引の結び目のちょうど真下に、表書きの文字(御霊前)よりも少し小さめに書くとバランスが良くなります。
- 住所: 中袋の裏面には必ず住所を書いてください。これは、後日ご遺族が香典返しを用意する際の「仕様書」としての役割を果たすためです。
「5,000円」はどう書く?金額別・大字(漢数字)の書き換え一覧表
中袋の金額は、書き換え(改ざん)を防ぐために「大字(だいじ)」と呼ばれる旧字体の漢数字で書くのが正式なルールです。IT営業の現場での契約書と同じく、大字の使用は「正確な金額を証明する」という論理的な機能を持っています。
香典の中袋に記載する「金額と漢字」の対照表
| 包む金額 | 書き方(大字) | 読み・備考 |
|---|---|---|
| 3,000円 | 金 参阡圓 | 「参(さん)」「阡(ぜん)」 |
| 5,000円 | 金 伍阡圓 | 翔太さんが今回書くべき正解 |
| 10,000円 | 金 壱萬圓 | 「壱(いち)」「萬(まん)」 |
- 也(なり)について: 「金 伍阡圓 也」のように最後に「也」をつけるマナーもありますが、1万円以下の場合は「圓」で止めても全く失礼にはあたりません。
「香典袋の中袋に金額を記載する際、アラビア数字(1, 2, 3)や略式の漢数字(一, 二, 三)ではなく大字を用いるのは、数字の書き換えを物理的に不可能にするための伝統的な知恵でもあります。」
出典: 香典袋の書き方・マナー – 株式会社 公益社
最終チェック!「新札NG」「ボールペンNG」など、直前に焦らないFAQ
書き終えた後の「包み方」で、最後の仕上げを確認しましょう。
Q. 財布の中に「ピン札(新札)」しかありません。どうすればいいですか?
A. 必ず「一度折って」から入れてください。
新札をそのまま包むのは、「あらかじめ不幸を予期して新札を用意していた」と解釈され、非常に失礼とされます。翔太さんの手元に新札しかない場合は、真ん中で一度二つ折りにし、あえて「折り目」をつけてから中袋に納めてください。
Q. 中袋の住所も、薄墨の筆ペンで書かなければなりませんか?
A. いいえ、中袋はボールペンでもOKです。
袋の表面(名前)は「作法」として薄墨筆ペンが必須ですが、中袋の住所・氏名は、ご遺族が整理する際の「事務的な読みやすさ」が優先されます。筆ペンで住所を書くのが不安であれば、そこだけは黒のボールペンやサインペンを使用しても失礼にはなりません。
まとめ:準備は整いました。自信を持って参列を
これで香典の準備は完璧です。最後にチェックリストを確認しましょう。
- 袋: 絵のない「御霊前(無地)」を選んだか。
- 筆: 「薄墨筆ペン」で表面を書いたか。
- 文字: 金額は「金 伍阡圓」のように大字で書いたか。
- お札: 新札であれば、一度折り目をつけたか。
香典のマナーは、形式だけでなく「相手を思いやる仕組み」です。翔太さんが今夜20分かけて丁寧に準備した事実は、明日必ず先輩に伝わります。まずはコンビニへ向かいましょう。袋選びで迷ったら、この記事の「H2-1」をもう一度確認してください。
[参考文献リスト]
- 一般財団法人 全日本葬祭業協同組合連合会「香典袋の書き方と作法」
- 株式会社 公益社「香典の知識:表書きと金額の相場」
- 三越伊勢丹 マナーガイド「冠婚葬祭の贈答マナー:葬儀・お通夜編」
- 葬儀のガイド「1級葬祭ディレクター監修:若手社員のための弔事マナー」

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