取引先の訃報を受け、上司から「会社を代表して参列し、有志3名分をまとめて出してきてくれ」と頼まれて焦っていませんか?コンビニの棚の前で、数種類ある香典袋を手に立ち尽くす時間はもう不要です。
ビジネスシーン、特に「会社名+連名」というケースは、個人での参列とは異なる「序列(役職の順序)」のマナーが問われます。ここで失礼があると、あなた個人の評価だけでなく、会社の信頼まで損なわれかねません。
こんにちは。ビジネスエチケット・ストラテジストの佐藤 誠です。私は長年、ホテルの式典責任者として数千件の弔事を見てきましたが、実は多くの方が「マナー本通りの正解」に縛られ、遺族の事務負担という「現場の視点」を忘れてしまっています。
この記事では、あなたのスマホを香典袋の横に置いて、そのまま「なぞるだけ」で完成するビジネス特化型のテンプレートを用意しました。宗教が分からなくても、連名の順番に自信がなくても大丈夫. 3分後には、自信を持って受付に差し出せる完璧な一袋が仕上がります。
[著者情報]
佐藤 誠(さとう まこと)/ ビジネスエチケット・ストラテジスト
元大手ホテル式典責任者。15年間で3,000件以上の式典を差配。弔事における伝統礼節と、実務的なビジネス習慣のバランスに精通し、現在はIT企業等のマナーコンサルタントとして活動中。
【序列順】ビジネス連名(3名)の黄金レイアウト図解

まず一番大切なことをお伝えします。「一番偉い人を真ん中に書く」というのは、ビジネスの連名では間違いです。
お祝い事の熨斗(のし)と混同して、中央に最も役職の高い人を配置してしまう方が非常に多いのですが、香典袋の記名には「右側上位」という絶対の原則があります。
3名連名の場合、香典袋のちょうど中央に、最も役職の高い筆頭者の姓名を書きます。そして会社名は、その筆頭者の氏名の右側に、少し小さめの文字で添えてください。 2人目、3人目は、筆頭者の左側へ順に並べていきます。
「右側が中央」と覚えておけば、スマホを横に置いた時、迷わずにペンを動かせるはずです。右側を上位とする連名のレイアウトを守るだけで、受付で袋を手渡した瞬間、相手に「この会社はしっかりしている」という無言の信頼感を与えることができます。
宗教不明でも失礼なし。失敗しない「香典袋」の選び方

取引先の葬儀では、相手の宗教が判明していないことも珍しくありません。ここで最大の失敗を避けるための「ビジネス・リスク管理」を伝授します。
最も汎用性が高いのは、「御霊前(ごれいぜん)」と書かれた、水引が黒白の「結びきり」で、かつ「蓮(はす)の花の絵がない」無地の袋を選ぶことです。
実は、コンビニでよく見かける「蓮の花のエンボス(浮き彫り)」がある袋は仏教専用です。もし先方が神道やキリスト教だった場合、マナー違反となってしまいます。逆に、無地の香典袋と「御香料(ごこうりょう)」という表書きは、あらゆる宗教において失礼にあたらない「究極の安全策」となります。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 迷ったら「蓮の花がない」無地の袋を手に取ってください。
なぜなら、ビジネスシーンでは「失礼がないこと」が「個性を出すこと」よりも遥かに優先されるからです。私の経験上、多くの宗教に対応できる無地の袋を用意しておくことは、急な訃報にも慌てず対応できる「デキる社会人」の標準装備です。
表は薄墨、中は黒。遺族に喜ばれる「ハイブリッド」筆記術
筆記具について、教科書通りに「すべて薄墨(うすずみ)で」と考えていませんか? 実はここに、ビジネス現場での「本当の気遣い」が隠されています。
表書きは「必ず薄墨の筆ペン」を使用してください。 これは「涙で墨が薄まった」「急ぎで駆けつけたため墨を十分に磨れなかった」という弔意の象徴です。
しかし、中袋(お金を入れる封筒)に関しては話が別です。中袋は、遺族が後で集計する際に読みやすいよう「0.7mm以上の黒のゲルインクボールペンやサインペンなど、ハッキリと読みやすいもの」で書くのが現代のビジネスマナーとして定着しています。
遺族は葬儀後、数百枚の香典袋を整理し、芳名帳と照らし合わせる膨大な事務作業に追われます。薄墨で書かれた細い文字は、時に判別が難しく、集計ミスを招く原因にもなります。弔意は表で示し、事務的な正確さは中で示す。この使い分けこそが、相手を慮る「ハイブリッド筆記術」なのです。
中袋をなぞり書き。旧字体(大字)と住所の正しい位置
最後の仕上げ、中袋の記入です。ここでのポイントは、金額の改ざんを防ぐ「大字(だいじ)」という旧字体を使うこと、そして代表者の住所を明記することです。
今のスマホの画面を少し明るくして、この見本をなぞるように書き進めてください。
- 金額の書き方(表面の中央に大きく):
- 5,000円の場合 → 金 伍阡圓
- 10,000円の場合 → 金 壱萬圓
- 30,000円の場合 → 金 参萬圓
- 住所・氏名の書き方(裏面の左側に):
- 連名の場合は、中袋の裏面には代表者の住所のみを記します。 その左に「〇〇株式会社 有志一同(他2名)」と記します。全員の氏名・住所・個別金額を別紙に役職順で記し、 袋に同封するのが、遺族の事務処理を助けるプロの技です。
香典で使う数字の対応表
| 算用数字 | 普通の漢数字 | 香典での旧字体(推奨) |
|---|---|---|
| 1 | 一 | 壱 |
| 2 | 二 | 弐 |
| 3 | 三 | 参 |
| 5 | 五 | 伍 |
| 10 | 十 | 拾(または阡) |
| 10,000 | 万 | 萬 |
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 中袋の金額の最後に「也(なり)」をつける必要はありません。
なぜなら、也は「これ以下の端数はありません」という意味で、円の下に銭があった時代の名残だからです。現在はつけてもつけなくても失礼にはなりませんが、ビジネス文書としてスッキリ書くなら、省いても全く問題ありません。
まとめ
お疲れ様でした。これで「会社名・連名」の完璧な香典袋が仕上がりました。
- 右側上位の原則で、会社名を右、役職順に右から左へ記名した。
- 宗教不明リスクを考え、蓮の花がない無地の袋を選んだ。
- ハイブリッド筆記で、表は薄墨、中は読みやすい黒インクで書き分けた。
- 改ざん防止のため、中袋には旧字体の金額を記した。
マナーに自信が持てれば、あとは受付で故人への弔意を静かに伝えるだけです。あなたのその丁寧な準備は、必ず相手に伝わります。さあ、この黄金レイアウトをスマホで表示したまま、最後のアフターチェックをしてから出発しましょう。
[参考文献リスト]
- 日本マナー・プロトコール協会: 連名での香典の出し方
- 三越伊勢丹 慶弔マナー: 不祝儀袋の書き方とマナー
- 鎌倉新書: いい葬儀「香典の相場と書き方マニュアル」

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